実家に五月の風を入れる
実家に行くと、母はデイサービスで、父がいつものように雨戸を閉めたまま部屋にいた。
こんなにいい天気だから、雨戸を開けて空気の入れ替えをしよう。
と言いがなら雨戸を開けようとしたら、うまく開かない。
「コツがあるんだよ」と父が雨戸を開け始めた。
五月のさわやかな風が部屋に入って来た。
私は、父の座っている半径1mにあるスティック掃除機を取り出し、掃除機をかけ始めた。
こんなに近くにあってもマメにかけることは無い父。
テレビを購入していた父
すると、テレビを指差して「買い換えたんだよ」と父。
「え?テレビ買ったの?そうだね、随分使っていたからたまに調子悪かったからよかったね」というと。
なんと、実は物置化している部屋にも一年前にテレビを買ったと言い出しました。
「はぁ?あそこはシーズンオフの物とか置いている入らない部屋でしょ?」
買わないでしょ!?普通!と言いたかったがそこは飲み込み、その部屋に行ってみる。
スルッとかけてあった布を外すとパナソニックのテレビが出て来た。
「え~~・・
あったの?だったら、ここのテレビを居間に持って行けば買わないで済んだんじゃない?」
「工事してあるから配線で動かせない」
「・・・・。」
「でも、ここは開かずの間のようなところで、誰もここで見る人いないでしょ?」
「見ようと思ったんだよ」
「・・・・。」
ここで見たい?うそでしょ?足の踏み場もない段ボールやタンスの部屋。
どうしたらそんな発想になるんだろうか。
しかも、一年も使わなかったのだから、壊れたテレビの代わりに持ってこようと思わないのだろうか。
死蔵品ってこのことじゃないのか。
実に理解不明な父に驚きながらも、父なりにイメージがあったのだろうと考え直して目をつぶった。
しかし、次の言葉には仰天を超えたものがある。
なんと
壊れたテレビを取っておくと言う父
「このテレビ取っておくから」
「?」
「このテレビ」を指すものは、なんと壊れたテレビの事だった。
ひぇ~~~・・さすがに意味が分からない。
「壊れているテレビを取っておくって何?邪魔なだけでしょ?家電のリサイクルで電気屋さんに引き取ってもらうそんなルールなかったっけ?」
「このテレビは画面がとっても綺麗なんだよ」
AQUOSだからと言いたいのだろうか?わかります。高性能だったんでしょう。
しかし、壊れているんでしょ?どうするってこと!?
ネットにつないでモニターとして使うってこと?
いやいや、この家にはネット回線がありませんから!
本当、こういうの私達に後々処分させられるってことなのか。
父よ。
勘弁してください。
壊れたテレビは捨てましょう
これは同居の弟にさせるしかない。と一瞬思ったが、すぐに無理だとわかった。
父の頑固さに弟が説得できるはずがない。
戦争体験者は物が無くなることを恐れている。執着がある。
わかっているけど・・凄い。
まぁ・・・。大丈夫。
大したことない話じゃないかと・・。思う事にした。
こういうマインドは父に鍛えられていくのだろうか。
お父さん。壊れたテレビは捨てましょう。
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